社会人がフルタイム大学院に通うということ

2年間の大学院修士生活を終えて、「社会人がフルタイム大学院に通う」ということを振り返ってみたいと思います。

東大の学際情報学府は、社会人向け大学院ではなく、フルタイム大学院ですので、基本的には平日日中に授業があります。

M2(修士2年)は修論執筆に向けて研究に時間を割きたいため、できるだけM1(修士1年)のときに単位を取ってしまおう、ということになります。また、必修授業や選択必修授業もM1のときにあります。

私のM1のときの時間割は、こんな感じでした。

また、この他に、夏休み中の3日~4日間で集中して開講される集中講義というものを2科目とりました。教育学部の「教育原理」と、教育学研究科の「プログラム評価論」という授業です。集中講義は1日あたり3コマ~4コマあるので大変ですが、社会人にとっては短期間で単位がとれて助かります。

春学期、秋学期とも、ゼミ以外は4~5科目の履修で、少なく感じるかもしれません。ただ、各科目、授業外での準備やワーク、レポートなどがありますので、時間のやりくりが必要です。さらに、メインは授業を受けることではなく研究ですので、月1回程度のゼミでの研究発表をマイルストーンとして、研究を少しずつ進めていきます(研究発表の有無や頻度は研究室によって違います)。M2の4月の研究構想発表会や、M2の7月の中間発表といった、大きな発表の機会もありますので、それらの準備も必要です。

私は働きながら大学院に通ったとは言え、夫が代表で、他にはアルバイト含めて数名しかいない小規模の会社でしたので、とても柔軟な働き方ができました。大学院在籍中は、アルバイトのような扱いにしてもらい、働く時間をぐっと減らして、余裕のあるときに仕事をする、という形にしていました。また出版の仕事はパソコンがあればできることが多く、大学のコモンズなどで空き時間に仕事をすることもよくありました。同じ研究室の修士課程に会社勤めの社会人の先輩が1人いましたが、かなり柔軟な働き方を会社に認めてもらっているようでしたし、大学内でもよく忙しそうに仕事をしていました。

フルタイム大学院の修士課程は日中の授業が多いので、社会人には結構厳しいのですが、社会人がもっと入っていって、若い学生たちと交流できると、お互いいい刺激になりますし、大学での学びがもっと活性化すると思います。ディスカッションやグループワークをする授業も多かったのですが、そこで感じたことは、社会人の生の経験に基づいた発言があると、想像で話しているだけよりも格段に議論が深まり、リアリティが出るということです。また、大学院に来るような探究心の強い若い学生たちと真剣に議論をすることは、社会人生活では得られない、仕事のためではない、純粋な学びの世界に浸れる貴重な時間でした。他の研究室にもちらほら社会人学生がいて、様々なバックグラウンドの他の社会人学生と話すことも、大変刺激的でした。会社をリタイアした後に修士課程に入ったという60歳前後の方もいらっしゃり、お話が面白くて、毎週授業でお会いするのが楽しみでした。

フルタイム大学院である以上、授業の時間帯を変えることは難しいと思いますが、もっとe-learningで受けられる授業が増えたり、短期集中で必修の単位を取る道を作ったりして、社会人が通いやすくなるといいな、と思います。柔軟に働ける可能性がある方は、ぜひ会社に交渉するなどして、フルタイム大学院にもチャレンジしてみてください。